遺体の身元確認、スピードアップ
高崎の歯科医、小菅さんら開発 歯のレントゲン写真使い
毎日新聞(2007.10.23)
歯のレントゲン写真を使った遺体の身元確認のスピードを大幅に短縮する技術を高崎市高関町の歯科医師、小菅栄子さん(36)らが開発した。1枚ずつ写真照合していた作業がパソコン上で瞬時に判別できる。「少しでも早く遺体を遺族に帰すには身元確認の迅速化が不可欠」。小菅さんは日航ジャンボ機墜落事故(85年8月)の被害者遺族との交流から、開発を決意したという。【鈴木敦子】
自動識別ソフトは生前に撮影したレントゲン写真と遺体のものを照合する方法で、大量に取り込んだ写真から治療痕などが一致する写真を瞬時に選び出す。60人分の実験では、わずか3.6秒で照合。身元確認の現場では目視で2枚以上の写真を比較し選別する方法しかなく、同じ条件では計算上3600回の照合が必要になる。
これまでパソコンソフトによる照合は指紋で実用化されている。だが、歯は同じ部位を撮影してもX線の照射角度などで長さや形状に微妙な違いが生まれ、パソコン上で認識できなかった。小菅さんは約10年前から研究を始め、精度向上に力を入れてきた。昨年、画像の類似性を数値化する「位相限定相関法」の研究成果を持つ東北大と提携。微妙な違いを補正する技術を得て精度をほぼ100%に高めることができた。
520人の犠牲者を出した日航機墜落事故では約15%の78遺体が歯で身元が確認された。確率統計的には歯3本が一致すれば個人の特定ができ、損傷が激しく指紋採取が困難な遺体には有効な手段という。小菅さんは11月に米国での放射線学会で新技術を発表する。実用化されれば、全国の行方不明者と身元不明遺体との照合などにも活用できる。