静岡新聞の「本音インタビュー」というコーナーで、当院の小菅栄子のインタビューが掲載されました。
歯の身元確認システム開発
実用化へ制度設計模索
静岡新聞(2008.9.20)
歯のエックス線写真を使った身元確認システムを世界で初めて開発した。東海地震などの大規模災害に備え、県歯科医師会や県など本県関係機関、団体と連携して実用化を目指している。9月1日には県総合防災訓練の主会場となった静岡市を訪れ、県警や市、県歯科医師会などの検視合同訓練を視察した。
-開発したのはどんなシステムですか。
「生前と死後の歯のエックス線写真を自動的に比較することで、手作業で紹介する候補を瞬時に3~5%まで絞り込むことができるシステムです。東北大大学院の青木孝文教授の画像処理技術を取り入れることで、課題だったエックス線写真生じるひずみを解析し、補正できるようになりました。」
-システム開発のきっかけを教えてください。
「父が地元の歯科医として遺体の身元確認作業に当たった1985年の日航ジャンボ機墜落事故です。歯科医は歯の治療以外にも社会に貢献できる役割があることを知りました。その後、歯科医として父の検視業務を手伝うようになって作業の大変さを知り、何か自分のできることはないか-と考えるようになりました。大学の放射線学教室で学んだデジタルエックス線画像について研究を重ね、システムを開発しました。」
-日航ジャンボ機が墜落した御巣鷹の尾根の慰霊登山をされているそうですね。
「大学卒業後はほぼ毎年、父に同行して登っています。2002年、亡くなった高浜雅巳機長の妻淑子さんと登山中に偶然、出会いました。初めて会話した中で、『身元確認が終わったと言われて5本の歯を渡されたが、本当に主人の歯なのか信じられない』と言われ、大変なショックを受けました。当時、デジタルエックス線写真に生じるひずみを解消できず。照合の精度が上がらないため研究は足踏みをしていましたが、頑張ろうという気持ちになりました」
-今後の課題と抱負を聞かせてください。
「まずは生前と遺体の歯のエックス線写真を1対1で異同識別するソフトを開発し、普及させたいです。現場で使いやすいソフトを作らなければなりません。次に生前の歯のエックス線写真データベースの構築です。データベースの構築は歯科医師や県民の方々の理解と協力が必要なので、非常に時間がかかります。エックス線写真は地震などの災害で失ってはいけない社会の財産です。静岡では歯科医師や県、県警が一体となった検視訓練を視察して、防災意識の高さに感銘を受けました。先進県としてリードしてもらえるように、実用化のための制度設計を模索していきたい」