大丈夫ですか。 あなたの歯?
インフォメーションネットワークグループ機関紙 ING[イング] 2019 Spring Vol.18 (2019.3.15)
中年以降の日本人のおよそ8割がかかる歯周病。糖尿病の悪化や肺炎に結びつくというこの病気の 予防策とお口の健康について、歯科医師の小菅栄子先生に伺いました。
歯を失う 一番の原因は何か?
私たちが歯を失う原因として一番 多いのは、実は、「むし歯」ではありま せん。意外に思われるかもしれません が、「歯周病」なのです。むし歯のこと を専門的には「う蝕」または「カリエス (caries)」と呼びますが、これは細菌 がつくる酸によって歯が溶けてしまっ た状態のことを指します。むし歯の治 療は、この溶けてしまった部分を修復 すれば、何とか歯を抜かずに残すこと ができるケースも多いのです。それに 対して、歯周病が怖いのは、歯を支え る骨が溶かされてしまう病気だから です。症状が悪化すると、歯がグラグ ラして抜けてしまいます。
私の医院でも「先生、うまく噛めな いんですけど」と症状を訴えて来院さ れる患者さんのうち、その原因が実は歯周病であったというケースも少なくありません。中には、来られた時には、もはや歯を抜くしかないというこ ともあるのです。「もっと早く来院して 下されば、・・・」と残念に思うことがあ ります。歯周病は中年以降の日本人では、なんと8割もの方がかかる病気です。自覚症状が現れにくく静かに進 行するので、歯のぐらつきに気が付い た時には、すでに手遅れのことも多い のです。
歯周病を あまくみてはいけません
歯周病は全身の病気と関連する場 合も多く、悪化すると糖尿病、心疾患、 脳血管疾患などに悪影響を及ぼし、早 産などの原因にもなります。また、歯 周病と結びつく恐ろしい病気に肺炎 があります。肺炎は、高齢者が亡くな る原因として常に上位を占めていま す。歯周病菌が食べ物や唾液に混ざり、 これが誤って気道から肺に入ると「誤 嚥性肺炎」を引き起こします。高齢者 や病気などで飲み込む力が衰えてい る方、食事中にむせてしまうような方 は、特に細心の注意が必要です。日頃 から口の中をきれいに保ち、歯周病を 予防することが恐ろしい肺炎を防ぎ、 命を救うことにつながります。